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痛みとは?最新の痛み治療モデル「5Es」を簡単に図解する!


より詳しい内容はこちら

https://note.mu/tznote/n/nd0b4083121fd

患者は痛み(慢性疼痛や急性疼痛)を確かに主観的に実感します。

古典的なメカニズムに基づけば、体は損傷しているか病理学的な異常を体に持っているはずです。

しかしながらここ数十年の研究はそれを否定しています。

例えば持続性腰痛の90-99%は病理学的異常が痛みの要因となってはいません。

にもかかわらず、現在の医療に関わる人々が行う検査は構造や神経学(機能も含めた)的な検査に依存しています。

この痛みと検査の矛盾は疼痛治療を妨げます。

そこで我々は痛みについて認識し直す必要があります。

ここでは20194月に提示された「5Es」に基づいて「痛み」の理解を手助けします。

5Esとは?

5Es

  • embodied(身体化された)
  • embedded(環境に埋め込まれた)
  • enacted(行為に基づく)
  • emotive(感情を生み出す)
  • extended(拡張された)

の略称です。

元々4Esという概念がありましたが、それにemotiveを加えて5Esとなっています。

embodied(身体化された)とは?

我々が体に引き起こす状態は、体の内部で起こったことだけに起因するわけではありません。

周りの環境の影響が体の内部状態と相互に依存し、身体に影響します。

例えば痛みは時間や周りの人との関係、ストレス、その人の信念や時間が合わさったものが身体化された(embodied)ものです。

すべてが侵害刺激に由来するわけではありません。

embedded(環境に埋め込まれた)とは?

疼痛が身体化の結果として、その人の知覚に変化が起こります。

例えば、目の前のものを取ろうと思った時に、痛みがある人はより遠く感じます。

恐怖心が体現されている人は、スノーボードに乗った時の坂をより急に感じます。

つまり我々が知覚しているものは実際のその時の経験ではありません。

このメカニズムを利用して疼痛が増強されます。

身体化された(embodied)痛みは環境に埋め込まれて(embedded)疼痛の知覚を変化させます。

enacted(行為に基づく)とは?

身体化された(embodied)痛みは環境に埋め込まれ(embedded)、アイデンティティ(自我意識)、他者との言語的・非言語的コミュニケーション(傍観者、家族、友人、臨床医などと)を引き起こします。

これによる他者を含んだ「参加型の感覚形成」は二人(以上)が一人では生み出せない相互作用を生み出します。

言い換えれば、embodiedシステムとembeddedシステムは、世界の中で行動し、互いにつながり合うことを通して、意味の生成します。

これによりembodimentembeddedenactionは分離できません。

患者と医師の関係や患者の痛みの意味を考えるとき、この2人の間の感覚の違いは特に重要です。

例えば、患者と医療者の関係や患者の痛みの意味を考えるとき、この2人の間の感覚の違いで起こります。

能動的な視点で見ると、知覚は静的なものや私たちの中にあるものではなく、私たちが行っているプロセスや何かなのです。

emotive(感情を生み出す)

感情は単に精神的なものではありません。

表情やボディランゲージは時に感情を表現するように身体的なものでもあります。

感情と知覚は相互関係にあります。

痛みは生存やアイデンティティを守る反応で、持続的な痛みがあると、その人は脅威を認識し、痛みや感情を生じさせることによって適応しようとします。

痛みに関する感情的な原動力は痛みそのものに対する恐怖や組織損傷に対する恐怖などの感情です。

逆に気晴らしは、脅威の源から注意をそらすことで痛みを軽減できます。

extended(拡張された)

ここまでの内容をまとめると、痛みは脳にあるとか、患部にあるとか分断することはできず、痛みは常に世界と相互に連結しています。

患者は病理学的な所見が発見されるのを期待し、医師やセラピストはその期待に応える様に身体の構造的異常を伝えます。

しかし構造的問題は大抵痛みと関連しません。

この誤った解釈が患者の信念に根付き、自身の痛みとの一貫したプロセスとして認知されます。

このように問題のない異常(架空の異常)を認知し痛みは拡張(extend)されます。

我々がやるべきこととやるべきでないこと

以上が5Esを大まかに、そして端的にまとめたものです。

より詳しくはこちらからみることもできます。

古典的には我々は患者に対してあらゆるレッテルを貼ってきました。

  • ・筋が硬い
  • ・椎間板が突出している
  • ・姿勢が悪い
  • ・可動域が低い
  • ・機能が落ちている
  • ・筋力が少ない
  • ・安定性がない
  • ・骨格が歪んでいる
  • ・関節がずれている
  • ・筋膜が癒着している

など

これらは大抵痛みにはかかわらず、関わったとしても一形態でしかありません。

これらの生物医学的要因が関与しない疼痛に対しても我々はこのレッテルを貼ってきました。

この医療者の発言は患者と相互に関わり、つまりenacted(行為に基づいた)され、実際の痛みと医療者の説明とのズレをemotionでさらなる恐怖や痛みを生み、患者の痛みはextend(拡張)されます。

これはあるいは痛みのない患者にも想定されます。

痛みのない患者はある日、世間で言われるような、歪みや硬さを知覚します。

これは周りで姿勢の綺麗な人をみたからかもしれませんし、体の柔らかい人をみたからかもしれませんが、自身の内的な変化に関係なく、環境によって、自分が歪んで、硬いとembodiment(身体化)されます。

このembodimentembed(環境に埋め込まれ)され、動きの鈍さを増強するかもしれません。

さらに、医療者との接触、enactionはそれを異常とし、痛みと関連づけます。

現在までの古典的なアプローチは、一部の患者の痛みを取ったかもしれませんが、より多くの痛みをつくり増強させている可能性さえあります。

我々はやるべきことは、痛みの正しい認識を広めること。

間違った認識を正す際には、より害のない認知に変換するためのプロセスが必要です。

これは運動や趣味、人間関係、時間(過去現在未来)、社会そして無痛の実感により達成できるかもしれません。

参考文献

Peter Stilwell,Katherine Harman.An enactive approach to pain: beyond the biopsychosocial model.Phenomenology and the Cognitive Sciences.April 2019